〖お困り〗年中男児。テレビの影響か、近所の大きい友達の真似なのか、言葉も悪いし行動も加減なしです。叱らずよく言い聞かせてきたつもりだったのに、最近親の顔色をうかがうようになってきてしまって…。親の見ていない所で友達に乱暴な事をしているのではと、とても心配です。
〖お答え〗「頭から叱らず、丁寧に言い聞かせる」というやり方はいろいろな育児書に書いてありますね、お子さんと目線を合わせてと。それが良いとされているため、教育熱心なお母様ほど実行なさっているのでは。「あなただって恐いこと言われたらいやでしょう」とか「あなただってぶたれたら痛いでしょう、だからお友達にもしないのよ、わかった?」と優しく言い聞かせれば、お子さんは「うん」とか「はい」とか言うでしょう。本当にわかったのでしょうか。
この時お子さんの頭は受け身の状態です。立派な理屈をたくさん言われれば言われるほどますます受け身になってしまい、幼児の頭は働いてくれませんし、ああまた叱られちゃったと思うだけです。
また、“自分がいやなことは人もいや”ということは、幼児にはわかりません。もっとずっと先、小学校の高学年くらいにならなければ。私達は「これは悪いことだからやめよう」「これはいいことだからしよう」と、将来自分で心や頭を働かせて判断することのできる人間を育てようとしているのです。では、どうしたら幼児の心(=頭)を働かすことができるでしょう。
家事をしながらも神経を使い、現場をとらえて「そういう事を言ったら大変」「そういう事はしちゃいけないの」など、短く言った方が良い。(にこにこ言ったらだめ。ことさら恐い顔をすることはないけれど、きっぱりとした表情で)その方がお子さんの頭が働きます。ごてごて言わず、「あら恐い言葉ね」とか「それ意地悪っていうのよ、意地悪さんになったら大変」など、ズバリ言われたら「あ、じゃあやめよう」というふうに頭が働くでしょう。(3歳児年少さん、あるいはもっと小さい人にはこの方法は向きません)
相手をぶってしまったら、「あら大変、痛かったわね、ごめんなさい」と、ぶたれてしまった相手にお母様が心から謝ったらいいです。謝っているママを見たら、お子さんは何か感じるでしょう。感じれば次に考える。「あなたがぶったんだから自分で謝るべき」とお母様が知らん顔をしているのは良くないです。乱暴な言葉が少しでも和らいできたと感じたら、「このごろえらくなったわね」と認めてあげることを忘れずに。褒める時は目を見てたっぷりと。ママはぼくのことちゃんとわかってるんだとお子さんは嬉しいでしょう。
今のお子さんは心に何か不満があってイライラしている人が多いです。可愛がって親切にお世話してほしい、お子さんの要求を条件つきでなく無条件に受け入れてあげてほしい。そうしてあげながら「悪いことは悪い、良いことは良い」という生活をさせてあげなくては。大きくなって自分を使いわけるようになったら大変ですもの。
それから「テレビでやってるもん」ときっと言われるでしょうから「テレビはいい事ばかりやらないのよ」とお子さんの耳に入れておくことも大切。いつもごてごて言わないからこそ、こういう一言がお子さんにきちんと入っていくのです。
子育ては根気がいり、永久に続くかに思えますが、案外短い間なのです。あの時ああしておいてよかった、いつの間にか子も母も成長できたと実感できる日々が、必ずやってきますよ。